第2章 2人の最悪な男
「元彼?」
振り返ると、にやにやしながら森崎幹也が電話を切っていた。
電話を切られて少し安心してしまう。
「忘れたいけど忘れられないってやつ?意外だね。」
「……忘れたい。」
「なんで?」
「え?」
「なんで忘れる必要あんの?」
「…だって、忘れなきゃ、思い出して、会いたくなって、辛いもん。」
「それの何が悪いんだよ。」
「…こいつは最低な男だって、理性では分かってるから。
でも、本当は…。」
…って私なに言ってんだろ。
と思って顔を上げると、森崎幹也が近づいてきた。
そして私の顔をのぞき込んで言う。
「忘れさせてやるよ。」
その低く囁く声は、そのときだけ、透の声よりも鼓動が大きく鳴った。
そしてその甘い言葉とともに深い深いキスを落とされる。