第2章 2人の最悪な男
意外なくらい普通の家だった。
森崎幹也はスタスタと階段を上がっていくので慌てて追いかけた。
適当に座ってて、と言って私を部屋に案内したあと、電話しながら下に降りていった。
ポツンと残されてすることもないから部屋を見回す。
意外にも散らかってなくて、整頓されてる。
へぇって思って勝手にベッドの下の引き出しを開けた。
見えないところに詰め込むタイプかもと思ったら、漫画の週刊誌が綺麗に並べられていた。
ついもう1つの引き出しも開けて……黙って閉めた。
もう引き出しを探るのはやめよう。
ふと思い出してスマホを取り出し、電話帳を開いた。
…竹本透、消そうかな。
ついでに着信拒否にも設定して。
そう思って削除しますか、という画面まできて…躊躇ってしまう。
あぁもうどうして消せないんだろうって思ってため息をついた。
でもどうしても指が動かない。
固まっていると、電話がかかった。
「…っ!」
画面には《竹本透》と表示されている。
応答、というところを押しかけて……やめた。
今さらなによ。駄目。
出たら調子良いこと言ってくる。
もう会わないって決めたんだから、もう声も聞かない。
って言い聞かせるのに、電話が切れない。
どうしよう、って思って悩んだあげく、取ってしまった。
「…はい。」
『……出てくれないかと思った。』
電話越しでも、低く囁くようなあの愛しい声を聞いて胸がぎゅっとなる。
「…出ようかどうしようか、すごく悩んだ。」
『なかなか出なかったもんね。』
彼の声を聞く度、胸の鼓動が速くなる。
『ねぇ、蒼。』
少し強めに呼ばれてドキッとする。
でも、上手いこと乗せられないようにしようと思って黙る。
すると、向こうが切り出した。
『ごめんね。』
ただ、その一言。それだけなのに。