第4章 【R18】食べさせてみた×高杉
チリン。
儚げな鈴の音が響く。
客の来店を告げる為に見世の番頭が鳴らす一種の合図のようなものだ。
飛び跳ねたくなる気持ちを抑え付けて音の方を見やると、其処には待ち侘びた彼が居て。
「今宵の月は一段と綺麗だぜ」
お前さんもそう思わねェか?
妖艶な隻眼をふと緩めて彼は言った。
会って早々愛を囁いてくれる甘い声。
そのたった一言で身体の芯が熱くなる。
『ほんに……美麗な玉兎でありんす』
暗に伝え返す恋慕の情。
桃色に染まる頬を隠して流し目を決め込むと、高杉さんは形の良い唇で弧を描いて笑った。
「待たせたな」
ポン ポン
結い上げた髪に彼の手が重なる。
いつまで経っても子供扱いする彼にもどかしさを覚えながらも、私は綻びそうになってしまう頬を抑えるのに必死だった。
『さ、行きんしょう』
ツンとした素振りをやってみせて骨張った手に触れる。
未だクツクツと喉を鳴らす高杉さんの瞳には優しい色が浮かんでいた。