第4章 【R18】食べさせてみた×高杉
江戸随一の歓楽街、吉原遊廓。
天板の間から月灯りが降り注ぐ此処で私はある御方を待っていた。
コン……ッ
手持ち無沙汰で点けた煙管を返す。
どこぞの旦那様から貢がれた上等な葉も、今日ばかりは何の味気も感じられなかった。
私が欲しいのは此れじゃない。
こんな枯れた草では渇いた心が満たされないのだ。
『……高杉さん』
物欲しげな声で愛しい御方の名を呟く。
すると艶やかな彼の顔が瞼に浮かんで、ほんの少し胸が潤う気がした。
ああ、早く会いたい。
美しい御顔も。
妖艶な身体も。
あの人の全てで私を愛して欲しい。
窓の外に思いを馳せて月の傾きを見やる。時間にすると日付けが変わる手前と云った所か。
約束の時間まで一刻程。
たった30分がこんなにも長く感じるなんて……誠に、恋心とは恐ろしいモノだ。
赤格子の向こうから飛んでくる幾多の声を無視して、私は金色蝶の訪れを直向きに待つのであった。