第6章 キスをして
「新八くんて……何か、女の子みたいって聞いてたからちょっと意外。フツーに男の子だし……カッコいいね」
このセリフ。胸が高鳴らないはずがない。 何だ、もしや狙われているのかと内心プチパニックの新八だが、「そ、そう」と焼き鳥を頬張ることで誤魔化す。
「あ、良かったらアド教えて? 番号も」
「え。あ、ああ、別にいーけど……」
「やった! 良かった、ありがと~」
ぴ、とお互い情報を交換し合う。
女子とアドレスを教え合うなどさすがに初め てではないが、今までで一番ドキドキした。
登録をしたところで、銀子が友人らしき女子に呼ばれる。
「あ、ごめん。また後でメールするね」
「あ、はいっ、」
友人らの元へ戻っていく銀子に、ようやく肩の力を抜く。
緊張したが、何より終始男として新八を見る銀子の瞳が嬉しかった。
その後も新八は知らない学部の男子と話して交流を深めてみたりと、思っていた以上に飲み会を楽しむことが出来た。
会計を済ませ、店を出て二次会の希望をする者たちが挙手をする。が、真っ先に乗りそうなはというと、
「ゴメン無理……マジ飲み過ぎた……」
と青い顔で言うもので、幹事抜きの二次会となり希望者と帰宅者に別れひとまず解散することとなった。
「大丈夫かよ~」
「わりとヤバい」
「送ってってやろうか?」
「いや、」
不意にが新八の肩を抱き寄せた。
「は?」
「こいつん家うちと近いからさ……送ってってもらうよ。お前逆だし悪いか ら」
「そっか。頼むぜー可愛いくん」
「はあ!? 可愛いくんて何ですか! つかてめ、」
抗議しようとした新八の肩をがぎゅ、と掴む。
「……頼むよ」
憂いを帯びたその視線と声に何故かドク、と心臓が鳴った。
のこんな顔はあまり見ない。
本当に具合が悪いのかと息をつき、の背中を擦りながら数人で夜道を歩いた。