第6章 キスをして
「……僕のイチゴは」
「俺のお腹のナ・カ」
「クソ野郎!!」
「好きな食べ物は男らしく“肉”とか言ってるのにやっぱりイチゴは大好きなんだから可愛いなあ新八は~」
「マジでくたばってしまえええ……!!」
「そんなこと言っ、おっと」
ポケットの中で響いたバイブ音にが反応し、「ちょっとごめんな」とそのまま電話に出る。
「もしもし何?……いや今学食。……うん、あ、そう? じゃあ待ってる。うん、 はぁい」
笑顔で電話を切り、「悪い悪い」と仕舞う。新八はチッ、と舌打ちをしてのケーキに乗ったメロンをフォークで刺した。
そしそのまま口に運ぶ。新八
「あら俺のメロンが」
「また女ですか」
「おっ? おっ? 嫉妬か? ん?」
「違ぇわ! 呆れてんだよッ」
なんだ、とまだ自分のケーキの上に残っているみかんを刺したが再び頬杖をつく。
「新八はいつになったら俺に股を……いや心を開いてくれるのか」
「てめえ……マジで刺すぞ……」
「学食フォーク殺人事件? 勘弁しろよ」
お手上げのポーズで冗談めかして笑う、新八がギリギリと歯を軋らせていると、カツカツと急ぐ足音が聞こえた。
「~」
「ん? ああ、銀子ー」
こっちこっち、と手を招くにため息をつき、新八は席を立つ。
あれ、とが顔を上げた。
「何だよ、行っちゃうのか?」
「僕がいたってしょーがないでしょ」
「別にいたっていいのに。ただ話するだけだぜ?」
「居心地悪いからいいです」
じゃあ、と空いた食器と荷物を持って席を離れる。
後ろから「あれっ、行っちゃうの」「らしい」という会話が聞こえたが構わず食器を片して食堂を出た。
天気の良い昼下がり、午後に授業はない。本屋でも寄って帰るかと伸びをして大学を後にした。