第6章 キスをして
「女の子」
「……が、なんですか?」
「いやあ~何でお前女の子じゃねえのかと思って」
「何でそんなこと思ってんだよ!!」
だん、とテーブルを叩く新八に、向かいに座っていたはいやあ、と頬杖をついたまま新八を眺める。
「何せ可愛いし、小さいし、何より可愛い」
「うるせえわ!」
「頑張って男らしくしようとして、荒い言葉遣いになってしまったあたりがまた可愛いんだなあ……」
「意味わかんねえええ……!!」
頭オカシイんじゃねえの、とオレンジジュースをストローで吸い上げる新八。
は大学内でも有名な女たらしである。
暇を作っては彼女とデート、暇を作っては別の彼女とまたデート。
女にだらしないを毛嫌いする者も多いが、それでも構わず寄っていく者も同じくらいいた。
それだけ魅力的、らしい。
女みたいだと散々言われながらも男である新八にはわからない。
何の縁かとは小学生からの付き合いである新八だが、未だにわからない。
名前だけは男らしくて良かったと思う新八だが、顔と身長はどうにもならない。
ニコ、と微笑むにギリィとストローを噛み潰す。
「そんな怖い顔で見るなよぉ、可愛いだけだぞ?」
「うるせえええええ! 何でお前ばっかモテるんだよ!」
「せめて身長があと十……いや二十あればなあ。それでも可愛いが」
「ッギィィムカつくッ……顔は選べねえんだよチクショウ!」
「お前な、世には可愛く生まれたかった男子もいるんだぞ。ほら見てみろ、今日も可愛い新八を羨む眼鏡オタク男子くんたちの熱烈なあの視線を……あ、新八も眼鏡だった(笑)」
「違うだろアレは新八ファンクラブとか言ってる奴らだろキモいわ知るか!!てか、眼鏡バカにすんな!」
「俺も頑張らないと新八とられちゃうなあ。おっと安心しろよ、新八の処女は俺のものだぜ」
「怖ぇよ! 安心させろよ!」
不穏なことを言うにバリアのポーズをとる新八。
柱の陰から新八を見つめる男子たちにもギッと睨みを利かせると、彼らは何やら恍惚とした表情でフラフラと去っていった。
オエ、と思い手元のケーキを見たところで頭にハテナが浮かぶ。