第3章 マヨのお仕置き
それこそ息が掛かるぐらい近い距離のまま 胸を喘がせて、取り込む酸素もなんとなくタバコ臭い。
「な、んっで…」
かろうじて紡いだ言葉。
顎の疲労のせいか、疑問の言葉も疑問の体を成さない。
「……お仕置きだ」
理不尽かどうかすら解らないぐらいに、そ れは唐突な文言だった。
「お、し…?」
「言っただろ、正座じゃ済まさないって」
「え…」
言った。それは記憶にある。
それを反芻して、寝ないように俺は頑張っていたんだから。
「じゃあ…正座じゃ、済まないって…これ…? 」
キス…だとしたら、早くも年明けの内から、 年内いっぱいの運を使い果たさんばかりのラ ッキーのような気がした。
土方さんが変態だったのはさておき、クビも切腹も無い、減俸も始末書も正座も無いなら万々歳だ。
そう、
それならよかったのに…
目の前の土方さんが口角を上げた。
「――で、済むと思うか?」
「へ?――んぐッ」
また、口付けられる。
でも今度はほんの数秒の呼吸を阻害される程度の軽いもので、それはすぐに離れていっ た。
「ぷはっ」
「当然、正座でもキスでも済まさねぇよ」
「……」
土方さんって…こんな人だったっけ…?
やっぱり…夢…?俺は、そう思って目を閉じる。
「ふ、土方さん…」
「どうした?」
「目が覚めません…」
「よし、まず現実を見ろ」
「現実的に、土方さんが男にキスする様が想像できないです」
「大丈夫だ。キスで済ませる気が無いから、その想像は不要だ」
どうしよう、土方さんが壊れてる。
顔はいいのに、頭と瞳孔がどうかしてしま っているらしい…。