第3章 マヨのお仕置き
あとでどんな仕打ちが待っているにしたって、まずはリアルタイムにたたき起こされるだろう。
周りには誰も居ない。というか、気配が無い。
手を付いて身体を起こして、辺りを見渡す。
動かした手に、何かが触れた。
真っ黒な、塊――カラスだった。
「か…らす…?」
カラスは、じっとこっちを見ていた。
俺の手が触れても動かなかった。ということは、人間に慣れている?のか…?
「カァ」一鳴きするカラスは、やかましいイメージがあったけど 、その印象より小さな声だった。
「…かぁ?」
意味は無いけど、返してみる。
状況の不可思議には…この時点では気がつか ない。
いつになったら、気がつくんだろう。 …きっと、ずっと先だろうなんだろうな。
「カァカァ」
その場で二度羽ばたいたカラスは、ぴょんっと跳ねて、俺の方に向かって飛んできた。
手が触れるほどの距離で、向かってきたのだ。
当然、接触は免れない。
俺は、咄嗟に目を閉じた。
「痛ッ!」
喉を、裂かれた感触がしたその時………。
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「――痛ッ!」
目が覚めた。
「…痛…あ、れ?」
目を開いて、見えたのは自分の顔、鏡だった。
天井が、鏡?…不思議に思って、横たわった まま周囲を見渡す。
恐らくホテルだと思うけど…珍しい内装――思いつく結論といえば…
ラブホテル…か?
以前、他の隊士達と攘夷志士を追いかけて、潜伏していた部屋に突入した経験があって、そのときにだけ見たことがある。
その部屋とは大分赴きが違うが、そういうものだということは知識として知っていて、
だから、なんとなく、この部屋がラブホテルの一室であるということだけは想像がついた。