第13章 君と一緒っっ!
じっと見つめられているような視線を感じた神威が、ゆっくりと瞼を開けばそこにあったのはおもいっきり目を開けて神威のことを凝視する銀時の顔。
「……目、閉じてくれないかな。銀時…。」
銀時の唇まであと10㎝のところで神威が言う。
「俺、お前の不愉快そうなツラを見たいって言わなかったっけ?」
神威の唇まであと10㎝のところで銀時が言う。
ようするに、キスしているときの一番不愉快そうな神威の顔が見たいということらしい。
明らかに愉しんでいる悪趣味極まりない銀時の顔は、神威に怒りからくる勢いを持たせた。
さっさと終わらせるべく、グッと銀時の後頭部を引き寄せた神威が、唇から突き出した銀時の舌にかぶりついた。
チューッと吸い付いて、怒りに任せるかのように銀時の舌を激しく舐め回す。
生意気な後輩が、憎たらしい先輩に捧げたキス。 それは、お互い、目は開いたままで不気味な光景だった。
銀時の舌に自分の舌を絡めさせ、一通り舐め回してから、神威は唇を離した。
離れるとき、舌と舌を繋ぐように糸が引いたのが見えて、それが神威をげんなりさせた。
「……」
きっと自分は今、かなり不愉快さを顔に出してい るんだろうと神威は考えた。
だからこそ、目の前のムカつく男が猛烈に愉しそうな顔をしているんだ、そうに違いない。
神威は手の甲で自分の唇を拭いながら立ち上がっ た。
「約束は守りました、帰ります。」
一応敬語だけど、棘のある渡部の声を聞いて、満足気に笑いながらトドメとばかりに銀時が言う。
「残念だったな。も、同じように神威以外とはヤりたくないって考えてくれてると思ったのにな。」
言われて、帰ろうとしていた神威がバッ!と銀時の顔を見た。
言ってない…。 自分が賭けの裏に、そんなささやかな願いを抱いていただなんて言ってないはず…!
なんで知ってるんだよ!と、神威が目を見開いて銀時の顔を見つめれば、その瞳と目が合った。
銀時の瞳の中に、神威が映る。 相変わらず、なんでもお見通しな瞳。
「なんで分かるかって?可愛い後輩ことなら、なんでも分かるぜ?」
そう言いながら銀時は立ち上がり、そして神威の手首を掴みながら言う。
「慰めてやろうか?」