第13章 君と一緒っっ!
賭けに勝ったら、には手を出さない。
その代わり……
言われた言葉を思い出し、チッ…と舌打ちをしながら立ち上がった神威は、そのままテーブルを回ってゆっくりと銀時の座る場所へと近付いた。
願ったのは僕。
賭けたのも僕。
負けたのも僕だ……。
…約束は約束だし
神威は銀時の傍まで来ると、その場所で屈んだ。
神威の、「死ぬほど嫌だ…」みたいな表情を見ると、銀時のテンションが上がって仕方がない。
厭らしく笑ったその顔を、目を細め睨み付けるように見つめながら神威が言う。
「誰でも見境がないっていう噂、本当なんだね。楽しい?」
こんなことさせて何が楽しいんだ。
勿論、自分はこれ以上はないって言うぐらい楽しくないとか思いながら、神威は銀時の頬に触れた。
「楽しいよ。お前の不愉快そうなツラを見るのは」
「…………」
なるほど。そーいうこと…
銀時の発言を聞いて、無言で納得した神威は、これ以上時間稼ぎに会話をしていてもイライラするだけだと悟った。
手を銀時の頬に添えた神威が、ゆっくりとその顔に自分の顔を近付ける。
眉間に皺を刻みながら、顔を近付けてくる後輩の、心底嫌そうな表情。 テンションを最高潮にした銀時が、もっと神威を不愉快そうな顔にしてやろうと口を開いた。
犯すような視線を浴びせながら、口を開け、舌を突き出して、一言。
「ベロチューでよろしく」
俺が負けたら、には手を出さない。その代わり、お前が負けたら、俺にキスしろよ?
銀時が神威に提示した賭けの条件が、ソレだった。
べ、ベロチュー……!?
銀時の発した単語に、神威の顔が一瞬で凍り付く。一瞬呼吸が止まったような気さえする。
今頃は、変な女とラブホテル……。そして自分はこれから、銀時なんかと……銀時なんかと……銀時なんかと……
今日という日はまさに神威にとっては厄日みたい な日で、神威は自棄を起こした。
銀時の頬に添えていた手を滑らせ、銀時の後頭部に触れた神威。
ようするに、このクソムカつく銀時の顔を見なけりゃいんだろ!?
そう考えた神威はきつく瞼を閉じて絶対顔を見ないようにしながら銀時の頭を引き寄せた。
銀時の唇に自分の唇を近付けて、あと10㎝というところ。違和感を感じたのはその時だった。
視線が……