第13章 君と一緒っっ!
「…っ、っす……」
奥手なは、短めに答えたあとグビグビと目の前のビールを飲み出した。
その様子を隣りで見ていた銀時は、そこは相手の名前を聞き返すところだろと思いながら、会話を盛り上げられそうにないに助け船を出した。
「ナツミ。コイツどう?後輩なんだけど、可愛いだろー?女慣れしてなくて緊張してんの、コイツ」
銀時は、言いながらの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
あぁ…。折角セットした髪なのに…
そうは思ったけど、銀さんのおかげで助かったとも思った。
「うん!可愛いーよね!緊張してるとこも、可愛ーいっ」
女慣れしてないと付け加えた一言が決め手で、隣りに座った彼女のリアクションが、思ったよりもよかったから。
仲間うちじゃ経験してないヤツは、天然記念物扱い。 合コンでお持ち帰りに失敗する度に歌われる童貞コールはもう聞き飽きた。
は、銀時に目で「ありがとうございます!」 とサインを送り、更に酒を飲むペースを早めた。
俺は今日、今までの天然記念物な俺を脱ぎ棄てるんだ!!
最近の神威と言えば、に嵌まりくりで、合コンなんてものすっかりご無沙汰だった。
神威の隣に座った女が、さっき銀時が言っていた神威狙いの女。到着と同時に神威の隣りを陣取り、それから忙しそうに口を動かす。
「神威くんってカノジョいるのー?」
「いや、いない。」
どこかで見たことがあるその女は、確か学校の一 個上の先輩だ。 去年ミスに選ばれたりしてたから、学校では結構顔が知れていて、神威もその顔を知っていた。
「じゃあ、好きな人とかはいないのぉ?」
上目遣いで顎を引く仕草。
男を落とすテクを知っているその女は、今まさにターゲットである神威にその技を披露していた。
「いや、いないね……」
だけど、神威はその技すら視界に入れていない。
「えー、いないのぉ?じゃあ、気になる人とかはー?」
美人で可愛い学園のマドンナな彼女を目の前にして、神威の意識は違う方向へと向いていた。
気になる人…
そう言われて、神威は今一番気になる人物のほうへと目を向けた。
テーブルの反対側に座る奴。 遠くて会話は聞こえてこないが、女を前にしていつものことながらガチガチの様子で全く会話も盛り上がっていない様子。