第13章 君と一緒っっ!
頬を摘まんでいた指が、の唇へとスライドし て、極めつけにその誘い…。 は、神威がセックスに誘っていることが分かって間抜けな声を上げながら、耳まで顔を赤く染めた。
一気にと神威の二人の間に流れる、甘ーい雰囲気。
しかしそれをブチ壊したのは、最近自分自身の恋路が上手く行っていない男。
の手にしていた牛乳を奪い取り、ストローに口をつけ残っていた牛乳をすごい勢いで吸い上げた。
あっという間に牛乳は空。 飲み干したその男は、空になった牛乳パックを、 ぐしゃりと片手で握り潰してから言う。
「おい、公共の場所でイチャつくんじゃねー よ!」
不機嫌さを全身で表現するその男は、阿伏兎だった 。
「べ、別にイチャついてなんかっ!め、めめめ、 目、腐ってんじゃねーの!」
阿伏兎に言われたは、慌てて言い返して、それから慌てて自分の唇に触れていた神威の指を振り払った。
そして周りを見てみれば、仲間が阿伏兎と同じよーな顔して自分と神威のほうを見ていた。
「な!なんだよ、その顔は!みんなしてっ!!」
周りの視線に、更に焦ったが、ぎゃんぎゃんと騒ぎ出し、そしてその騒がしいのが最近ピリピリしている阿伏兎の怒りの頂点に触れた。
「……うるせー、童貞」
小さく静かに、だけども阿伏兎の呟いたそれの威力はものすごい破壊力だった。
阿伏兎に言われた残酷な言葉に、はその場にヘタリとしゃがみ込んだ。
静かになったを見て、阿伏兎はフンと鼻を鳴らす。
童貞……?
は、心の中で、自分自身に問い掛ける。初体験は、脱童貞を試みたあの日済ませた。
だが、どうだろう?
自分は未だ、その内壁の感触とか包み込まれる気持ち良さだとかそういうのは知らない。
あの日はただ神威のを突っ込まれただけだ。
そうだ…
忘れていた、大切な何か。俺にそれを思い出させてくれたのは、阿伏兎が八つ当たりで呟いた言葉だった。
「……俺、まだ……童貞だったんだ……」
が真っ青な顔でそう呟いたのを聞き付け、わらわらと俺達の周りに人が集まってくる。
「お!まだ童貞だったか!」
ゲラゲラと笑いながらすでに筆下ろしを済ませたヤツがを茶化す。
「てことは、神威もまだ童貞かー?」