第11章 勝つためには……?
別に、今に始まったことじゃないけど、
ムードもクソもねぇ
心の中でそう呟いたは、もう一度目の前の物騒な建物を見てから、今度は辺りをキョロキョロと見回して、コソコソしながら暗闇に消えかけている土方の背中を追った。
建物の中の部屋は、外観を上回る凄さだった。
壁紙はヤニで黄ばんでいて、天井の角にはキラリ と光に反射して光る蜘蛛の巣。
すげー、ウチのばあちゃんちよりもボロイし…とか考えながら、は部屋の中を歩き回る。
土方は、腰にある刀やら棒やらの入っているカバンをベッドの脇に放り投げ、それから着ていた隊服の上着を脱ぎ、その上に投げつけた。
それを見たは、持っていた荷物を床に落とし、腰に巻いていた上着をその荷物の上に被せた。
半年ほど前からだっただろうか。こうして仲の悪いはずの二人が2ショットになることが何回かあった。
そういうときは、決まって逃げられた失敗した後。
気分が乗らない。 だけど、相手に逃げられた悔しさが、二人を引き寄せる。
「あー、もう、めんどくせっ。さっさと終わらせようぜ」
「…言われなくても、そのつもりに決まってんだろ」
それが始まりの合図で、二人は同時に着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。
喧嘩の続きだけをするつもりなら、わざわざこの 安さだけが取り柄のオンボロラブホテルに入ったりなんかしない。
「大体、なんでテメーは戦のたびにギャーギャー騒ぎ出すんだよ」
埃っぽいベッドの上。そう言いながら、土方はの顎を掴んだ。
「うるせーな、今日のアレはアッチが先に仕掛けてきたんだよ!」
が言い返しながらクイと顎を持ち上げたところで、土方はの唇に喰いついた。
乱暴で暴力的なキスに、愛なんて甘ったるいもん は存在しない。
なら、やる意味なんてないんじゃねぇかとも思うけど、形式だけでも似せた。
数時間前に行われていたご用改め。その突撃の大切な場面でが騒ぎ相手に感づかれてしまったのだ。それを思い出し、更にキスに乱暴さを強めた。
指に力を入れて顎を下に引き下ろし、無理矢理の口をこじ開けた土方は、そのまま舌を差し入れ て、口内を玩んだ。