第2章 東京都立音駒高校排球部
男子の方は試合がまだ終わっていなかった。
「3セット目か…」
やっぱり男子と女子の差は凄いと改めて感じる。
ボールが床に叩きつけられる時の音がまず違った。
鉄朗はまだレギュラーじゃないから、ベンチで試合を見守っていた。
数分すると試合が終わった。
集合がかかり、話終えた後すぐに解散となった。
音駒からこの学校まで近かったのでみんな歩いてきたから、帰りは別々だ。
「悪りぃ待ったか?」
「別に。」
「相変わらず素直じゃねーなー」
「早く帰りたい。」
「結構待ってるじゃん」
鉄朗はケタケタと笑いながら私の頭を撫でる。
「汗だく」
「鉄朗、臭い」
「うそっ!?」
「嘘。」
鉄朗は「なんだよー」と少しホッとした顔をしていた。気にしてるのかな、そういうこと。
私は鉄朗から視線をそらして周りを見渡すと、音駒のジャージを来た男子らがちらほらこっちを見ている…いや、睨んでる?
「鉄朗。」
「ん?」
「何でもない。」
ジロジロと見てくる人たちの話をしようとしたが、やっぱり辞めておこう。めんどくさい。
「あのさ、朱莉。」
「何。」
「朱莉は好きなやついるの。」
「…いる。」
「誰。」
鉄朗は私を見下ろしながら、聞く。鉄朗の横顔が夕日に照らされて、よく見えなくなっている。
「……嘘。かも。」
「嘘…かも?なんだそれ。」
「わかんない。」
「あっそ。」
自分は聞いといて、教えてくれないなんて…まぁ、私は聞こうとは思わないけど。
「晩飯、うちで食ってくか?」
「じゃぁ、そうする。」
「ん。」
他愛もない会話をするのは好きだ。
鉄朗とこうやって並んで帰るのも好きだ。
鉄朗のことが好きだ。
けど、それは一緒にいて楽しい友達。だから、研磨と鉄朗は仲のいい友達で、幼馴染。っていうのかな。