第8章 strategie⑧
一ヶ月後──
あれから俺は自宅謹慎処分を受け、ずっと引きこもった生活をしていた。
一ヶ月も休みのある生活などこの業界に入ってから初めてで、冗談ではなく発狂しそうになることが何度もあった。
初めの一週間はゲームやF1の情報収集などしてそれなりに過ごせたが、それを過ぎると好きなゲームもF1も全くと言って良いほどしたいと思わなくなった。
がんばって時間をつくってやるから面白いのであって、いざなんでもして良いですよ。と膨大な時間を与えられるとなにもやる気が起きない。
テレビではまだ飽きることなく俺とヒロカのスキャンダルが流れていて、あることないこと勝手に騒ぎたてている。
俺と付き合ったのは売名行為で、まだ売れてないヒロカは俺を使って有名になろうとした。
だとか
お金目当てで、俺に借金を全て払わせようとした。
などと言っている。
最初はそんなはずないやろ。
と怒りを覚えた俺だった。
しかし、実際名前も知られていない存在だったが、検索ワードでは常に上位に来ているし、事務所に所属していなかったが、いろんな有名事務所から声がかかっているらしかった。
毎日こうやってテレビで言われていると、もしかしたら俺は騙されていたのかもしれない。と思うようになってきてしまった。
しばらく顔を見ていないというのもあり、ヒロカという存在が段々ぼやけてきて、本当のヒロカはどこにいるのだろうと感じてきたのである。
しかし
騙されていても良かった。
なんだって良いんだ。
その笑顔がもし偽りだったとしても、もう一度笑顔を向けて欲しい。
もう一度抱きしめたい。
そんな風に毎日を過ごしていた。