第7章 strategie⑦

携帯が鳴る。


俺はヒロカからだと思い、急いで液晶画面を見たらマネージャーの川崎からだった。

電話に出ると、妙に冷静な声で「光一さん？」と呼ばれる。

「光一さんテレビ見ました？」

「おお。」

「どこから本当で、どこから嘘ですか？」

完結な質問に流石やな。と思う。
今までのマネージャーの中で川崎が一番信用できたのはこういうところだ。
私情を抜いて、いつも合理的に仕事をこなしてくれる。
感情的にならない。

余裕を失っていた俺に、冷静に対応してくれる川崎に改めて感謝の気持ちが生まれた。


「ヒロカのプライベートの話しは全く知らん。それ以外は全部本当や。」

「分かりました。では事務所に伝えておきます。しばらくは自宅待機でお願いして、必要なものがあったら僕が買ってきますので連絡してください。今後の話しは少し落ち着いたら社長と面談しましょう。なにか質問ありますか？」

頭をよぎったのはヒロカの顔だった。


「いや…」

「分かりました。では。」

「あっ！！！」

「なんですか？」

俺は少しどもるように小さな声になる。

「あの…ヒロカは…。その…大丈夫なんか？」

「………。」

川崎は少し沈黙する。

「わかりません。」

大丈夫なはずがない。そんなこと俺にも川崎にも想像ができた。

「連絡とかはできひんのか？」




「光一さん、非常に言いにくいのですが。」

焦る俺に対して川崎が低く冷たい声で話し始める。

「もし彼女の素性が報道通りなら、わたしも事務所側も応援はできません。それはわかりますよね？」

「おお。」

「どんな人と恋愛関係になろうが今の光一さんの年齢なら口出しはしませんが、不倫はだめです。もし離婚をして光一さんを選んだとしても、この流れを世間にバレてしまった以上あまりにもイメージが悪すぎる。私だけじゃない。世間は誰も二人の恋愛を応援してくれません。」

「そうやな…。」

「彼女を思うなら関係を絶たれるべきだと思います。」

「……。」

「すみません、失礼します。」


そう言って電話を切った。