第7章 strategie⑦
そういえば俺はヒロカの女優の姿を知っていても、それ以外はなにも知らなかった。
彼女がどんな人生を歩んできたか聞かなかったし、彼女自身も話そうとしなかった。
昔のヒロカが出演していた自主映画の映像から、この間俺らが共演したドラマの映像、
キャバクラの宣材写真、風俗の宣材写真、現在風俗店に出入りしている彼女の映像まで流れる。
さらにギャンブル狂の父親が亡くなっており、父親が残した多額の借金があることも流れる。
そこには俺の知っているヒロカはいなかった。
派手でちゃらちゃらしていて、女優やりながら遊びまわって堂本光一と不倫までしている、貞操観念のない馬鹿女というような扱いで報道されており、俺が騙されていて可哀想というドラマが作り上げられていた。
俺はそれが許せなかった。
ヒロカを振り回して縛りつけていたのはむしろ俺の方だ。
彼女は確かに不倫していたが、苦しんだ。
そして魂を込めて女優をやっている。
しかしメディアはそんな彼女の苦悩なんて興味がない。
ヒロカをとことん悪者にして叩いた方が面白いからだ。
見るものを楽しませることができるから。
許せねー。
俺は震える程の怒りを感じた。