第5章 strategie⑤
「生姜焼き明日でいい。このまま一緒に寝てもええか?」
そういうとヒロカはまた相槌だけうつ。
「うん。」
彼女はいつも言葉が少ない。
その裏にどんな思いが隠れているのか、俺には計り知れなかった。
二人で服を着替えずにベットに入った。
俺はただヒロカを抱きしめて寝た。
今日は温もりを感じるだけで満足だった。
もう戻れないところまで来てしまったと感じた。
彼女なしに生きるなんてできない。
俺がこんなにもろく弱い人間だとは思わなかった。
失うものがない時は強くいれたけど、失いたくないものができてしまって、俺は弱くなってしまった。
しかし同時に彼女の笑顔を手にしたら、無敵にもなれた。
一人だったら絶対得られなかった強さを感じた。
強さは弱さで、
弱さは強さだ。
人はみんな弱いもので、それを補うために寄り添わなくてはならないんだ。
何処かで聞いたことのある、使い古された言葉が俺の胸に響いた。
俺は世間の人より速く大人の世界に入り、いろんな経験をしたという自負があったから、なんでも知っている気でいたが、みんなが当たり前に知っていたことを知らなかったようだ。
俺は彼女の前ではまだまだなにも知らない子どものようだった。