第2章 strategi②
タクヤはわたしと真逆だった。
父親は亡くなったが、しっかりと仕事をしていてしかもそこそこの額の蓄えがあり、わたしの借金も返せる額はあった。
しかしタクヤにはやりたいことがなかった。
費やすものもなく、たまに風俗に行って発散する程度であった。
「俺はヒロカの芝居を応援したいし、辞めて欲しくない。俺にはやりたいこともないし、結婚して自由にやればいい。」
そう言った。
わたしは即決した。
タクヤには申し訳ないが彼に対する愛はなかった。
女優に対する執着心だけでわたしは彼との結婚を選んだのだ。
わたしは女の幸せをその時捨てた。
─大好きな人と結婚して一生を共にする。
何かを捨てなければ何かを手に入れることはできない。
わたしは田舎を捨てて、東京の暮らしを手に入れた。
わたしはプライドを捨てて、デリでお金を手に入れた。
それと同じことだ。
こんなにわたしのことを応援してくれる人はタクヤだけだ。
その時決めたのだ。
もう誰とも恋をしない。
彼と共に生き、彼を支えて生きていく。
それがわたしの人生であると。