第3章 red sickle
セバスチャンは手に持っていたコートを坊っちゃんの肩にかけた
セ「――お優しいのですね」
シ「何度も言わせるな。僕は優しくなど「お優しいですよ」
セ「でなければ…“弱虫”ですかね?」
『セバスチャン…!』
シ「貴様…」
セ「何故“撃たなかった”のですか?」
『ぇ…?撃たなかった?』
セ「“肉親さえ見殺しに”?嘘は感心しませんね。あの晩、貴方は銃を隠し持たれていた。撃とうと思えば彼女を撃てたはずです。けれど貴方はためらった。私が促しても貴方は銃をとらなかった。何故です?マダムを自分の手で殺すのが怖かった?誰とも知れない女は殺せても、やはりお身内は殺せないとでも?」
あの晩のことは私は何も聞いていない
今ここでセバスチャンが話したことが私が初めて聞いたこと…
たぶん坊っちゃんの腕にあった切り傷はマダムがつけたものだろう
そのとき坊っちゃんは隠し持っていた銃を使わなかった…
確かに身内を殺すのは辛い…
でもやらなければ悪の貴族ではない…
その真意を私も知りたかった