第7章 Secret Circus
私達は敵地に向かうはずだった。
しかし、あのお二人が黙って見届けてくれるはずもなく…。
扉を開くとそこには両の手を目一杯広げて立つアグニさんがいた。
「「………え?」」
呆けていると、そのアグニさんの後ろからソーマ様が顔を出した。
「ふふふふふふ。甘いぞシエル。俺が守っているこのタウンハウスから簡単に出られると思うなよ!!お前は絶対に風邪を引いてる。それをこの屋敷の総督であり、お前の親友である俺が見過ごすワケにはいかん!」
「誰が親友だ。ふざけたことを言うな」
そんなソーマ様を無視し進もうとする坊っちゃんに、ソーマ様はアグニさんに命を下した。
「アグニ!!絶対にシエルを通すな!!」
「ジョー・アーギャー」
そんなお二人に坊っちゃんは怒りを露にした。
「いいかお前ら…。僕には仕事がある!お前らの遊びに付き合ってるヒマはない!ゴホッ、そこをどけ!」
「病人はベッドで看病されるのが仕事だ!!」
「僕はお前らと違う!これくらいの…ッ。ゴホッゲホッ…」
「坊っちゃん…!」
「シエル様!」
激しく咳き込みよろけた坊っちゃんを私が後ろから、アグニさんが肩を掴み支えた。
「シエル様、どうかベッドにお戻りください!その呼吸音は喘息特有のもの。大丈夫なハズがありません!」
それでも、坊っちゃんはアグニさんの手を叩きセバスチャンを呼んだ。
「気安く僕に触れるな!!セバスチャン!こいつらをどかせろッ。ゲホッゴホッ」
本当はお二人と同じように私も、坊っちゃんにはベッドでお休みになっていただきたい。
だけど、私に、坊っちゃんをお止めする術なんて、無い。
「かしこまりました」
諦めかけたそのとき、我々の耳に思いもよらぬ方の大声が響いた。