第7章 Secret Circus
「お疲れの姫サマの為にマッサージでもしてやるよ」
「…しなくていいです」
まったく…この悪魔はいったい何を言い出すのか…油断も隙もあったもんじゃない…。
悪魔というものは相手にするだけでこんなに疲れるのか…これはお風呂で疲れを取るよりも睡眠をとった方が効果的ではないのでしょうか…?
まだそう時間は経っていないが、もう上がろう。
「ん?なんだ。姫サマもう上がんのか。つまんねぇな」
本当にたまにセバスチャンの方が好ましく思いますよ。本当に…!
心の中で悪態ついてるとここに最も来てほしくない人の声が聞こえた。
「ネイラ殿!お背中お流しします!」
「……………ぇ?!ま、待って…」
制止の声も虚しくその扉は開かれた。
一時の静寂。
私とアグニさんは見つめあったまま動けずにいた。人というものは心底驚くと声も出せず、動くことすらできないということをこの身をもって体験しました。
最初にこの静寂たるカオスとも言えるこの空間を破壊したのはアグニさんの方でした。
「も、ももももも申し訳ありませんんんんん…!!!!!」
凄まじい音を立てて扉が閉じられた。
そこで私はやっと何が起きたか理解した。
リオンは…もう消えていた…契約書は…!見られていなければいいけれど…いやいや待て私。体を見られた…?それは非常にまずい。
が、事件は連鎖するもので。
「どうしたアグニ?!何があったのだ?!ネイラは…!」
騒々しい足音と共に聞こえたのはソーマ様の声。
これはとても嫌な予感がします…。
浴槽から飛び出してタオルで簡単に水気を取りシャツを羽織る。
「いけません…!王子…!」
「放せ!アグニ!」
無遠慮に扉は開けられ、二人は雪崩れ込むように部屋に入ってきた。
「…………お二人とも。部屋を出て、少し談話室でお待ちいただけますか?」