第7章 Secret Circus
「チェックメイトでございます。ソーマ様」
坊っちゃんとセバスチャンが調査に出かけてから数時間。
私はソーマ様に捕まり、チェスの相手になっていた。
屋敷のことはアグニさんに任せきりで…本当に申し訳ないです。
「あー!!!また負けたぁ…!」
大袈裟に頭を抱えて唸るソーマ様は何度目かの台詞を口にした。
「もう一回だ!!」
私はジャケットの中で時間を確認すると席を立った。
時刻はもう夕食の準備をしなくてはいけない時間。さすがにアグニさんに全てを押し付けるわけにはいかない。
「申し訳ありません、ソーマ様。夕食の準備がありますので、続きは明日になさいましょう」
頭を下げアグニさんがいる厨房へ向かった。
「アグニさん。すみません。お手伝いできずに…」
「いえ!ソーマ様に付き合って頂いてありがとうございます」
ジャケットを脱ぎ、腕を捲ってアグニさんの隣に立つ。
本日は坊っちゃんがいらっしゃらないから夕食はインド食。
私の専門外だ。アグニさんのお手伝いに回ろう。
「アグニさん何を作っているんですか?」
アグニさんの手元を覗き込めば、潰したジャガイモに丸く薄く伸ばされた何かの生地。
「サモサという物です」
サモサ…やはり聞いたことのない料理だ。