第7章 Secret Circus
しばらくするとセバスチャンが帰ってきた。セバスチャンはそのまま私の隣に腰を下ろした。
「で?どうだったんだ」
坊っちゃんがそう聞いたが、セバスチャンは含みのある笑みを浮かべ答えはしなかった。
「それは後程、ゆっくりと説明いたします」
そしてタウンハウスに到着する直前、セバスチャンは口を開いた。
「坊っちゃんには、“サーカス”に入団していただきます」
私は開いた口が塞がらなかった。
坊っちゃんがあのサーカスに入る?
同時に馬車が停まり扉が開いた。馬車を降りながらセバスチャンが説明を続ける。
「はぁ?何でそういう流れになるんだ」
「何で、と言いますと」
「だから…」
「シエルー!!」
坊っちゃんが何かを言いかけたとき大きな声で遮られた。
太陽のような笑顔で出迎えてくれたのはソーマ様とアグニさん。
「遅かったなー!今日の予定は終わったか!?今日はチェスとやらを教えてくれ」
ですが、ソーマ様には大変申し訳ありませんがそれどころでは無いのです。
「僕がいつ、そんな命令をした?」
「何か不都合でも?」
「不都合とか言う問題ではなくてですね」
本当に不都合だのつごうがあるだのと言う問題では無い。坊っちゃんは伯爵だ。伯爵がサーカスをやるなんてそんなの…。
「今回の件に」
「なんだシエルすごい仏頂面だな!せっかく俺が出迎えたんだぞ。ニコッとくらいしろ!」
さすがにイラッとしたのだろう。坊っちゃんが声を荒らげた。
「五月蝿いッ今忙しいんだ!黙っていろ!!」
するとソーマ様は捨てられた仔犬の様に目に見えてしょんぼりとした。
「…笑顔でいないと幸運が逃げるんだぞー…」
本当に申し訳ございません。ソーマ様。今は本当に、本当にそれどころでは無いのです。
そして私達はソーマ様とアグニさんを置いて部屋に入った。