第7章 Secret Circus
少し離れたところに停めていた馬車の扉を開け、坊っちゃんが座るのを確認し、私もその正面の席に腰を下ろし、フードを脱いだ。
「坊っちゃん、仕事を抜きにしてのサーカスはどうでしたか?」
そう質問してみれば、坊っちゃんは少し考えてから口を開いた。
「…まあ、楽しめたな」
坊っちゃんは幼い頃体が弱く、そして今では伯爵として、女王の番犬として御活躍している。だから坊っちゃんにはこういったことででも楽しんでいただきたい。
「それは良うございました」
「…お前はどうだったんだ?」
坊っちゃんは顔を背け、私に問いかけてきた。
初めて見たサーカス。そんなの答えは決まっている。
「私も楽しかったです」
思い出しただけで頬が緩む。初めての経験、初めて見て聞いたこと仕事だったけど楽しかった。
「そうか」
そんな私を見て坊っちゃんが一瞬微笑んだ気がした。
しかし、セバスチャンがまだ帰ってこない。何かしらあったのでしょうか…?
「へくしっ…?」
突然坊っちゃんがくしゃみをなさった。
「寒いですか?」
私は着ているコートに手をかけそう聞いた。
「いや、いい」
寒さではないとしたらアレルギーの方か…どちらにせよ早めに屋敷に帰らなくては。
到着次第ホットミルクでも用意するか…。
そのためにはセバスチャンには早く戻っていただきたい。