第5章 幸せって?
ジャーファルSIDE
話は、聞いてしまった。
ドアは開けっぱなしで廊下で会話してたから、よく聞こえた。
盗み聞きは悪いかなと思ったけど、普通に聞こえてきた。
「・・・帰る・・・。」
自分は、今日まで何を考えていたのだろう?
過去に侵略してしまった国の現状とこれから先の提案は、すでにされていて知っていたし、その中にキユノ王国の話も少しだが入っていた。
その時は特に考えていなかったけれど…。
「ジャーファル、話し終わりました。・・・この後、どうしますか?」
「ああ、それならもうお昼に行ってください。私もあと少しです。」
「なら、待ってます。」
今までは無邪気な笑顔で待っていたけれど、今は張りつめたように、何かを考え込んでいた。
セリシアはキユノ王国に帰ることができる。
復興された今、故郷に帰ることができるようになったのだ。
ウィリランデからの申し出でもあるから、王族として追われることもない。
安全で、ここよりはるかに贅沢に暮らしていける可能性がある。
それなのに、この国に残るか?
・・・答えはきっと、否。
仕事に追われる日々より楽したいはず。
そうか、ウィリランデの王妃になる選択肢もあるのか。
・・・なんにせよ、決めるのはすべて彼女。
そしてきっと、この国に残る確率は、0に等しい。