第26章 行ってらっしゃいとおかえり
ジャーファルside
セリシアが残した手紙には、最初に抱いた印象から始まり、私が生死の境を彷徨い救いあったことも含め、国を発つ直前までのいろいろな思い出や感情が書かれていた。
ありがとう、好き、ごめん。
たくさん書かれたその言葉たちを見ていると、少し恥ずかしくなるから不思議だった。
私はきっと、ジャーファルに手紙を送ることはほぼ無いと思う。私には、今更あなたを友達のように扱うのが難しすぎるもん。王女として、恋人だったあなたに手紙は送れない。どうか理解して欲しい。でもね…本当は、怖いんだ。あなたに手紙を書いたら、好きだって、会いたいって言って、シンドリアに行ってしまう気がするんだ。
手紙を送らない理由はそんな感じだった。
納得してしまって、深く考えるのをやめてしまった。
…というより、考えるのを止めないといけなかった。
会えない人になにも言えないから。
納得して終わりたかったんです、私は。
「………ファル…」
ほら、今でもそう。
少し想像して想えば、セリシア声が聞こえてくる気がするんです。
それほど私は重症なのに、これ以上想ってはいけないのに。
彼女のことを考えるのは、なかなか止められないのですよ。
「……ジャーファル…」
…あれ。
おかしいですね、いつもより、聞こえる。