第26章 行ってらっしゃいとおかえり
ジャーファルside
「…姫様、そろそろ。」
無情にも、ルマニアが時間を告げる。
これで、もう…セリシアとは、会えないんだ。
「分かった…。」
ルマニアにそう応えると、周りのものは数人を残して船の中に引いていく。
セリシアも、最後の言葉を言う気なのだろう。
深呼吸をして、息を整えて。
「…それではこれで、しばしのお別れです。…今まで本当に、ずっと、ありがとうございました!」
みんなを見渡して、彼女は頭を下げた。
深く、長く。
頭を上げたセリシアは涙を流していたけれど、笑顔ですごく堂々としていた。
さよなら、というより…。
「…セリシア!」
つい、呼んでしまった。
既に船に行こうとしていた彼女は少し驚いたようだったけど、振り返って止まった。
「行ってらっしゃい。」
まるで行ってきます、と言いたげな表情だったセリシアを見ていたら、どうしても言いたくなった。
みんなも驚いた顔をしている。
別れの言葉には全く合わない言葉であることは理解している。
「…うん、行ってきます!」
それでも、嬉しそうに返してくれたセリシアを見たら、やっぱり正解だったとしか思えなかった。