第25章 出航準備、ラスト
ジャーファルside
「…2年、ですか?」
ちょっと予想外の言葉で、顔を凝視してしまう。
…2年前は確か、まだ彼女はこの国に来ていないはずだ。
そもそも、1年も経っていないはず。
「なんかね…新しいキユノ王国とはいえ、結局はキユノ王国なんだーって思ってて。だから、その…上手く言えないけど。」
言葉を探して、眉間にシワがよっている。
…政務室で、よく見た顔だ。
「王国を出てから帰るまでのこの2年が、私の旅だったんだよ、きっと。半年以上ここに滞在してるけど、ここでの生活も旅の一部だったんだって…思って。」
「…旅の一部、ですか。」
「この国が大好き。安心して過ごせる。…でも、故郷ではないから…。上手く言えないよ。」
「なんとなく、言いたいことはわかりますよ。」
複雑な気持ちがあるのだろう。
失っていた故郷に帰れる喜びも、少なくとも感じているはずだ。
でも、姫や王女の身分を考えるなら…旅という名の自由の終わりも意味する。
もしここを第二の故郷と考えてくれるなら、そこを離れる寂しさも。
いろんな思いがあるのだろう、セリシアには。
…その中に、私と離れることの何か感情を感じていたらいいな…。
そう思う自分は、往生際が悪いとでもいうのですかね。