第25章 出航準備、ラスト
ジャーファルSIDE
「…なんかね、ちょっと実感湧かないんだ。」
ぽつりと放たれた言葉。
「ここまでくれば実感も湧くと思ったんだけどな。…明日から、この景色を見ることが出来ないって変な感じだなーって。」
「…それを言うなら、私もですよ。」
「え?」
私はこの国を出て行くわけではないから、この景色は変わらず見ていれる。
でも、この景色を見る隣の人は。
「私の見える世界に貴女が…セリシアがいなくなることが、信じられないのです。…実感だって湧きませんよ。」
浮かぶのは苦笑だけ。
彼女も苦笑で返してくれる。
…でも、それでいい。
もしここで泣かれでもしたら私は引き留めてしまう。
この国から外に出させない。
…だから、こうしないと、こうされないと。
自分を保てそうになかった。
「また、遊びに来たいなあ。」
「お仕事が片付いたらおいでなさい。…サボらなければ、私も含めて歓迎しますよ?」
「うーん、ちょっと遠過ぎるな〜。」
「頑張ってくださいね。」
「多分来ても挨拶して帰る状況になるよね、それ。」
もうすぐで永遠かもしれない別れ。
それでも、ぎこちないかもしれないけど笑っていられる。
最後まで笑っていたい。
思い出される姿は、笑っている自分の方がいいから。