第20章 あっちの王とこっちの政務官
ジャーファルside
「それで、どうしたのですか?」
部屋を移動するなり声を掛ける。
この人相手に冷静な政務官を見せるのは無駄だと知っている。
だからそれなりの礼儀を持って接する。
「…貴女は、彼女がどんな選択をすると思いますか。」
それまでとは変わり、真剣な目になった。
そういえば、拒否できると言ったのはこの人だった。
「そうですね。…今彼女の心が揺らいでいることが、答えでしょうね。」
彼女も私も、あまり我儘を言える立場にいない。
それぞれの国に混乱を持ち込むことのできる場所にいる。
だからきっと、彼女は選択するだろう。
「…貴方は、それを許すのですか?」
「…許すもなにも無いのではありませんか?」
全てを決めるのは彼女だ。
私が縛るなど許されるはずがない。
「彼女は国の副政務官。…重要な人物の一人ではありませんか?」
「ええ。…しかしそれを決めるのは私ではなく、シンドバッド王です。」
そう。
つまり私が何かできることもすることもない。
できるとすれば、協力するだけ。
それしか力にはなれない。
「…貴方は、それでいいのですか。」
それでいいのか、ですって?
そんなの、決まっている。
「いいと…言えると、思えると思いますか?」