第20章 あっちの王とこっちの政務官
ジャーファルside
「ジャーファルさん。」
セリシアと別れてすぐ、声を掛けられる。
その声の方を振り向けば、いるのは彼。
「…カルマ王。どうかしましたか?」
一国の王である彼が声を掛けるとは。
この国に来た理由は既に知ったが、わざわざ私に声を掛けるとは思わなかった。
「そんなに嫌そうな顔しないでくださいよ。」
そうは言われても無理だ。
一度はこの人のせいで別れることとなったのだから。
…まあ、流された私も私ではありますが。
「別にもう、セリシアを狙っているわけじゃありませんよ。…これでも、許嫁がいるんですよ。」
「…それは知りませんでしたね。」
前回来た時はそんなことはなかったはずだ。
ここ数ヶ月で決まったのか?
「まあそれはどうでもいいですよね。…話はセリシアに関することです。」
…セリシア?
「…人払いはしますか?」
「いえ、どちらでも。」
…何を話す気なのだろう。
彼女が関わることで、人払いはしなくてもいいこと…?
…念のため、しておくほうがよさそうですかね。
「こちらへどうぞ。」