第20章 あっちの王とこっちの政務官
ジャーファルside
言えるわけがなかった。
思えるわけもなかった。
ただ自分にしょうがないと念じることしかできなかった。
「…ですよ、ね。」
…この人は。
「私に何を望んだのですか。」
彼女を引き止めて欲しかった?
なんのために。
むしろ送り出した方がいろいろと楽なのではないか?
キユノ王国らウィリランデ王国と協定を結んでいたはずだ。
王のいない不安定な国より、統括すべき人のいる国の方がいいだろう??
「…望んだわけではありません。…強いて言うならば、僕が一度困らせたあなた方に幸せになってもらいたかった。それだけです。」
…幸せ、か。
きっと彼女は自分より周りを見ている。
自分の幸せより周りの幸せを。
一人でも多くの幸せを考えるだろう。
…第三者の助言があってようやく自分の幸せを意識するようなひとなのだ。
あの時もそうだった。
私が術にはまった時も、自分のことをかえりみずに助けにきた。
カルマさんに求婚された時も、たしか妖精のおかげで留まっていたはずだ。
「…それは、私ではなく彼女に伝えてください。…私は、セリシアの考えを優先しますから。」
「…そう、ですか。」
納得するしかないのだ。
彼女の考えに賛成できる、彼女の味方でいたい。