第17章 キユノ王国一団
セリシアside
懸命な判断だ。
兄もきっとその判断をしただろう。
…けれど、頭ではわかっているのだけど。
「…兄を見捨てるしか無かったのですね。」
口から出るのは最低の言葉だけだった。
酷いものだ。
こんなことを言えば、それこそ争いの火種になるものだろう。
ならなくても、心に深い傷を与えるだろうに。
そしてそれをわかってるのに。
「…。」
誰も何も言わない。
そりゃそうだ。
「…ごめん、冗談だと思って。ちょっと動揺してるだけだから。」
そうか、動揺してるのか。
自分で言っておいてなんだけど、ぼんやりとしていたものがハッキリした気分。
自分で言ってるのに、一線おいたどこかから自分の言葉が聞こえてる感覚なんだ。
…駄目だ、今口を開いたら悪口しか出てこない気がする。
「…セリシア様がそうおっしゃるのも…当然でございます…。」
少しの沈黙をやぶったのは、セーカさんだった。
消え入りそうな声で、呟くようだった。
「大切な…御家族を…見捨てられたのですから…。」
その声に、私は思うところがあってつい顔を上げる。
セーカさんは顔を下げていて、その表情を見ることはできないけれど、何故か納得してしまった。
…この人も、家族の誰かを失ってる。
感情の入り用が他人事じゃないっていうか…。
…本当に悪いこと言った。
私最低だ。