第15章 手紙
ジャーファルside
だから彼女がキユノ王国に帰るだなんて、そんなはずがない。
そう信じたくて、でも心の片隅ではそれがあっちにとっては一番いいと思えて。
…でもそんな思考は、セリシアによって中断された。
「セリシア?…セリシア!?」
彼女の体がグラグラと揺れ始め、彼女は耳を塞ぎその場にしゃがみ込んだ。
…そうか、耳鳴りか。
経験したことはある。
日常生活でも聞こえるような生易しいものではなくて、かなり辛いものだ。
こうなると、耳鳴りがおさまるまでは何を言っても聞き取りにくい。
聞き取ろうと必死になると余計辛くなるのだ。
「おい、大丈夫なのか?」
「おそらく耳鳴りかと。」
シンも手紙から顔を上げ、ギョッとした表情で机から身を乗り出す。
答えれば、どこか疑問を浮かべた顔。
「あなた健康そうですもんね。」
「どういう意味だよっ!?」
耳鳴りの辛さを知らなさそうということです。
…そんなことより今はセリシアだ。
「…セリシア、部屋に戻りましょう。」
タイミングを見計らって声をかける。
耳元で、ちゃんと聞き取れるように。