第15章 手紙
ジャーファルside
セリシアは心ここに在らずといった状態でシンに手紙を渡す。
「…セリシア、大丈夫ですか?」
大丈夫な気はしなかったが、ついきいてしまう。
しかし彼女はそれには答えず、
「ジャーファルも手紙、読んで。」
無理して笑って、そう答えた。
…そんな顔しないでくださいよ。
無理するくらいなら笑わなくてもいいのに。
彼女の視線は床におちる。
…彼女に伝えるような内容ではなくて言ってはいないのだが、実はキユノ王国のことについてほんの少しだけ情報が入っていた。
民も集まり始め、国が成り立ってきているということ。
しかし、まだまだ不安定な要素はあげられるため、王の頑張りが必要になるということ。
なんとか手に入る情報なんてこんなもので。
もし、これで王であるデアルさんに何かあったとしたら…国は?
そんな大事な時に何かあったら、誰が国をしきる?
…まさか。
いや、そんなわけがない…。
だってデアルさんも言っていたじゃないか。
いつでもどんなときでもお前の帰れる場所を作るためだと。
その籍があってもこっちのことは気にしなくていいと。
兄と妹の繋がりを目に見える形で置いておきたい兄の願望だと。
…だからキユノ王国に姫として籍を置かせてくれと。