第14章 誘拐
セリシアSIDE
カコン
今までしていたような鈍い音じゃなくて。
もっと軽い、簡単な音。
そして小さな音を立てながら、目の前の扉はあいた。
「・・・。」
ゆっくりあいた扉と共に入ってくる光。
扉の隙間の光とは違って、もっと多い量の光。
「セリシア??」
そして聞こえるのは、私の名を呼ぶ大好きな声。
「・・・ジャーファル・・・。」
逆光になってしまってて、顔をよく見ることができない。
けど向こうは私に気が付いたらしい。
手を広げて抱きつこうとすれば、向こうから抱きついてくれる。
「ジャーファルだよね・・・?」
ここに彼がいることが何でか信じられなくて、そう呼びかけてしまう。
「他に誰がいますか、セリシア・・・。」
独りじゃなくて、そばに彼がいてくれている。
その事実がどうしようもなく嬉しく感じちゃって、涙が止まらない。
ああ、怖かったんだ。
全然そんな自覚なかったけど。
寂しいとは思ったけど、怖いなんて思ってないつもりだったけど。
でも、うん、そっか。
「無事でよかった、セリシア・・・。」
耳元で聞こえる彼の声がたまらなく嬉しくて、そのせいもあってか余計涙は止まらなかった。