第60章 鼓動が重なる感覚は
「……せっかく二人のお蔭で
生きることに前向きになれたのに、
残りの人生全てがかかってるようなことを、
流されるままに決めることなんて出来ない。」
少し語調が強くなったのは、
自分の意思の表れだろう。
今自分の中にある魂は、
二人に救ってもらったようなものだ。
やっと希望を持ち始めた命を、
無下に扱いたくない。
「……まぁ、お前の気持ちが
分からない訳ではねぇよ。」
リヴァイの声は穏やかで、その声を聞くと、
さっきまで上がる一方だった心拍数は、
少しずつ落ち着きを取り戻す。
「君が俺たちの世界へ付いて行くということは、
この世界を捨てるということにも繋がる。
いくら凛がこの世界を
生きにくい場所だと思っていたとしても
長年生きてきた世界から離れるのは、
相当な覚悟がいるだろうからな。
君がギリギリまで悩むのも、無理はないよ。」
エルヴィンはいつもの穏便な笑顔で、
リヴァイに乱された凛の髪を、
優しく撫でて直した。