第58章 浴衣の効果
物心ついたころから、
範司にとって男も女も
恋愛対象になることは知っていた。
性別という枠に囚われず
人を愛することができる範司を
偏見の目で見たことはない。
むしろ、そんな自由な恋愛が出来る範司を
羨ましく思えた時だってあったくらいだ。
……でも、その対象が
自分に向かうのは予想外で、
どうリアクションを取っていいのか、
どう反応するのが正解なのか、
そんなことを考えてみるが
混乱状態の頭はうまく働かない。
「もし凛がエルヴィンたちに
付いて行くんなら、
私も後悔の無いようにしたいな、
って思うんだ。」
範司の声からは珍しく真摯さが垣間見え、
思わず息を呑んだ。