第54章 安息の時間
凛は俺もエルヴィンも、
どちらも選ばないつもりだろう。
そして、俺たちの世界へ
付いて来ることもないだろう。
昨日一日、二人だけで過ごして、
俺たちの重荷になるのを
酷く恐れていることが感じ取れた。
凛が曖昧な答えしか返さないのは、
俺に期待も落胆もさせたくないからだろう。
そして俺たちが元の世界へ戻る直前まで
その決断は隠す通すつもりだ。
そんな思いを持っている凛を、
今この世界でどれだけ求めたとしても、
“それはこの世界にいるから芽生えた感情だ”
“元の世界に戻れば
その感情はなくなるかもしれない”
その思いは消えないだろう。
俺でさえ、この感情を疑う時があったくらいだ。
完全に俺たちの感情を信用するのが
難しいことくらい分かってる。
俺が何を言ったって、
凛は自分で決断を下す。
俺の望んだ結果にならなかったとしても
それを納得しなければならない。
それなら、この世界に居る今だけでも
凛を支えたい。
それが俺の欲求であり、
今の自分にできる全てだ。