第49章 特技
……そりゃこんな場所で
欲情させられそうになったら、焦りもします。
と、心の中で呟きつつ、
相変わらずマイペースなリヴァイから
再び少し離れようとすると、
強く手を握られて、動きを止めた。
「お前が迷子になったら困る。
大人しく繋がれてろ。」
リヴァイの少し嬉しそうにも見える
表情が可愛くて恰好良くて、
その表情に気を取られていると、
ついさっきまでの動揺を煽るやりとりを
忘れそうになる。
リヴァイがこの世界に
タイムスリップして来た当初は、
この人は喜怒哀楽があまりない人なんだろうな、
と思っていた。
でも今は、こうして優しい表情を
見せてくれることもあれば
本気で心配してくれたり、怒ってくれたりして、
感情の変化がすごくある人なんだということに
気付く。
元の世界でのリヴァイが
どんな様子だったのかは知らないけど、
今こうして私に見せてくれている顔が
リヴァイ自身の表情だったらいいな、
と、そっと思いつつ、
リヴァイの顔を盗み見ると
すぐに目が合い、反射的に視線を逸らす。
「……おい。
かなりニヤついてるが、何考えてんだ?」
訝しげな表情で顔を覗き込まれ、
咄嗟に強く手を握り返した。