第44章 欲
「……まぁ、女性に関係することは
相当自由に楽しんでたのかも知れないけどね。」
冗談めかして悪戯っぽく笑った凛を
そっと抱き寄せる。
もう今日は衝動を抑えることはやめよう。
自分の気持ちに嘘を吐くのも、
彼女に隠し事をするのもやめよう。
それが今の自分の“欲”だ。
背中に回された凛の手が
穏やかに背中を摩ってくれているのとは対照的に
自分の鼓動はやけに忙しなく動いていた。
「……ありがとう。」
それだけ言って、凛の瞳を見つめる。
少し顔と顔との距離を狭めると、
すぐにその意味を察し
ゆっくり目を瞑ってくれる凛の唇に、
そっと唇を重ねた。