第44章 欲
頂上に向かって進み続けるゴンドラの中に、
少しの沈黙が漂う。
エルヴィンは何も言わず窓の外を見つめる凛を、
盗み見た。
また問題発言をしてしまったようだ。
今日は何かと墓穴を掘ってばかりだな……
思わずため息が漏れそうになった時、
「……エルヴィン。
いいよ、欲深くなってくれて。」
凛の優しい声が、耳の奥に入り込む。
「元の世界でエルヴィンが
どんな生活を送ってたかは知らないけど
きっと自分の生活を楽しむことは
してなかったんでしょ?
この世界に居る時くらい、
欲深く楽しんだらいいじゃん。」
口元を緩めて話をする凛を見て、
小さく心臓が跳ねた気がした。