第44章 欲
「エルヴィンって、高い所大丈夫なの?」
ゴンドラの中に入ると、
少しずつ地上から離れていく風景を眺めながら
エルヴィンに問いかける。
「……特に苦手だと感じたことはないが、
こんな風に淡々と上昇されると、
少し足が竦むな。」
「そうなの?!」
思わず声が裏返りそうになる。
エルヴィンが僅かでも恐怖心を覚えるものなど、
この世に、
……いや、どの世にもない気がしていた。
「そうだな。
……だから、君が隣に座ってくれると
嬉しいんだが。」
エルヴィンが小さく微笑むのを見て、
さっきの発言すら作戦なのかと疑い始める。
エルヴィンの策士具合は
相変わらず私の想像を、軽く飛び越える。