第1章 非凡が現れる場所
「でも別にお化けが出たことなんて
ないんだよね……?」
「なんだ。
お前はお化けを怖がるような子だったかのう。」
「い、いや、そりゃ
出ないに越したことはないよ。」
咄嗟にいい訳のような言い回しをする私に、
おじいちゃんはニヤリと微笑んで見せる。
「じいちゃんは見たことがないが、
じいちゃんの親父はあると言っていたな。」
じいちゃんのお父さん……
という事は、私にとっての曽祖父、
ということか。
私が生まれた時には既に亡くなっていたし、
会ったこともない。
それに、そんな前の話なら、
さすがに今は問題ないだろう。
「それって何十年前も前の話でしょ?
それならもうあの部屋は、
大丈夫なんじゃないの?」
「そうじゃのう……」
随分淋しくなった頭を摩りながら
考え込むおじいちゃんを見つめる。
「……そう言えば。
親父はこうも言っておったわ。
“あの部屋は死者と通じているが、
〈並の死者〉が現れる場所ではない”と。」