第1章 非凡が現れる場所
私がまだ小学生だった頃。
築100年を軽く超える
おじいちゃんの家の中は、
私にとって“冒険”そのものだった。
い草の青い匂いも、軋む床も、
五右衛門風呂も、汲み取り式便所も。
都会に住む自分には
何もかもが新鮮で面白く、
夏休みにおじいちゃんの家へ行くのが、
いつも楽しみだった。
今思えば、その頃から田舎暮らしに、
憧れていたのかも知れない。
おじいちゃんの
足が悪くなったと同時期に、
家を改装し、それこそ昔の面影は
殆どなくなったが、
“あの部屋”だけは触れられることなく、
そのままの状態を保っていた。