第35章 恋人候補の説教
エルヴィンはロッカーの鍵を開け、
身体を拭きながら、
異常に高く設計してある天井を見上げる。
“日本”という、この国の文化は、
とても興味深かった。
この温泉施設もそうだが、
範司に連れて行ってもらったダムや工場は
どれも精緻な技術を駆使しており、
感心させられてばかりだ。
壁の内側で、この国と同じようなことが
出来るとは思わない。
だが、壁が取り払える時が来たら、
ここで得た知識が絶対役に立つ。
そう確信していた。
『もし壁がなくなれば、
凛を連れて帰っても問題ないのにな……』
不意にそんなことを考えてしまい、
小さくため息を吐く。