第30章 求めているのは一つの作用
「それは我慢する必要があんのか?」
「ないだろうな。」
私の替わりに返答した
エルヴィンの優しい声が聞こえた後、
前と後ろから、熱い体温に包まれた。
「こうしたら、
泣いていることは分からないだろう。」
背中の温もりが、穏やかな声を発する。
「だが、周りからの目はかなり痛ぇな。」
正面の熱からは、柔らかい表情が想像できた。
「……ありがとう。」
自分が二人に言いたいことは、
ただそれだけだった。
それを何十回も、何百回も言い続けたい。
なんなら毎日、朝昼晩と
挨拶代わりに言ってもいいくらいだ。
そう思ってしまうくらいに、
二人の暖かい言葉や体温で
自分の心は満たされていた。