第1章 非凡が現れる場所
少し肌寒くも感じるようになってきた夕方、
私は平屋建ての一軒家の前にいた。
「おじいちゃん!
ここ、本当にそんな格安で借りていいの?!」
「可愛い孫のお前の頼みだからのう。
タダで貸してやりたいくらいじゃが、
ワシも小遣いが欲しい。」
このおっとりした様子で
冗談めかしたことを言う御爺さんは、
今の私にとって、唯一の身内。
今は村から少し離れた、
老人ホームでの生活を楽しんでいる。
「それにしても、
月5000円は安すぎない?
私、もう少し出せるよ?」
「いいんじゃ。どうせワシの家に
住みたがる奴なんかおらんからなぁ。」
「……それって、あの部屋があるから……?」
「おお。まだ覚えておったか。
“死者と繋がる部屋”のことを。」